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去る2016年3月9日に、一般社団法人人と組織の活性化研究会(略称APO研)が主催、運営する「HHH(スリーエイチ)の会」発足記念フォーラムを、神戸大学にて開催しました。

当フォーラムは神戸大学経営学研究科と共催、経済産業省に後援いただき、経営者と経営学者、産業医、国政担当者が膝を付き合わせて本気で健康経営を議論するフォーラムとして公開参加型にて開催しました。全国から健康経営に関心を持つ人事・総務担当者をはじめとして、経営者、産業医や保健師、健康サービス提供者など144名の方にご参加いただきました。

 

主催者挨拶では、APO研 代表理事 石見一女が、この度HHHの会を発足した背景についてご紹介し、このHHHの会で、健康経営というのは単に健康管理を経営主導で推進するということだけでなく、経営の在り方や一人一人の働き方を変えていける可能性を示していけたらと期待を語りました。

 

DSC_0312開会の辞では、HHHの会の座長である神戸大学経営学研究科 教授 金井壽宏氏より、経営学の視点から、環境会計があるように健康会計という仕組みが出てくると、健康経営が大きく推進されていくのではないかとアイディアを提示いただきました。今まで経営学では働く人は健康だとの前提で話を進めてきたが、健康を損なったときにようやくその大切さに気付かされるものだからこそ、経営課題の一つに、働く人のイキイキや健康というのが織り込まれているのが大切だとの持論を紹介いただきました。

 

DSC_0340次に、応援の言葉として、経済産業省 商務情報政策局ヘルスケア産業課 総括補佐 梶川文博氏から、国が推進している健康経営施策について情報提供をいただきました。

進む少子高齢化を背景に、生涯現役で働けるような社会をつくっていくこと、企業が健康管理をコストではなく投資・経営課題として取り組める仕掛けを整備していくことが国としての課題であると、各種の資料を元に説明いただきました。施策として昨年度から選定を開始した「健康経営銘柄」について、その内容と成果について紹介がありました。さらに重要なのは中小企業にも健康経営の認知・取組みの輪を広げることだとし、今後は実際の投資対効果の測定や指標化も含めて、HHHの会とも連携しながら産官学含めた動きを促進していきたいと、当会への応援の言葉をいただきました。

 

DSC_0364次に、「経営戦略としての健康経営」と題して、NPO法人健康経営研究会 理事長 岡田邦男氏に基調講演をいただきました。日本ならではの健康経営の取組み方、企業が健康経営を戦略として取り組む意義等について、40年にわたる産業医としてのご経験をベースに、10年前から「健康経営」を発信してこられた岡田氏ならではの豊富な知見を惜しげなくご提供いただきました。

ストレスや労働環境病が増加している日本の社会的背景や、企業における様々なリスクを事例を挙げて紹介し、従来の福利厚生的な健康管理とは一線を画した戦略的な健康経営が必要であると強調されました。また、健康経営を実践するにあたっては、特に職場環境とコミュニケーションに投資することがポイントで、従業員が自社に誇りを持てるような組織作りを行うことが企業の生産性を高めるのだと、経営者が取るべき戦略のヒントを提示いただきました。

 

DSC_0394次に、HHHの会の副座長である武蔵大学 経済学部 准教授 森永雄太氏より、HHHの会の目指すゴールと取組み、特徴についてご紹介いただきました。ゴールは、健康経営を組織全体へ展開することと、健康と生産性の両立について検証することの2つ。会の特徴として①事例を学び合う研究会型であること、②経営学者が主導する産学連携の取組みであること、③実証実験的な取組みである点をあげていただきました。得られた成果を皆さんに報告できるよう、これから参画企業と進めていくと抱負を語っていただきました。

 

 

DSC_0425「健康経営の推進は経営の在り方を変えるのか、働く人の働き方の発想と行動を変えるのか」というテーマでパネルディスカッションを行いました。金井壽宏先生にモデレーターを務めていただき、パネラーには、ここまでの登壇者に加え、ロート製薬株式会社 代表取締役会長兼CEO 山田邦雄氏と、ルネサンス株式会社常務取締役執行役員 髙﨑尚樹氏を迎え、経営者×経営学者×産業医×国政担当者×健康事業提供者による、台本のない活発な議論が交わされました。

健康経営の促進要因と阻害要因は何か?との問いに対し、ロート製薬の山田氏からは、自社で2004年から様々に取り組んできた健康経営実践の中で、経営者として従業員の自発性を促すことが最も手強い課題との認識を率直に話されました。先日発表された副業制度にも触れ、社員と会社の自律した関係づくりが健康経営には必要だとの持論を示し、健康経営を単なるブームに終わらせてはいけないと問題提議されました。

ルネサンスの髙﨑氏からは、30年間企業の健康経営をサポートしてきた立場から現在の取組みについて紹介があり、その上で健康経営とは“当たり前の経営”ができるかどうかなのではないかと話されました。

健康経営研究会の岡田氏は、従業員の心身の健康情報にトップが関心を持ち、経営方針の中に健康経営を据えることが大きな促進要因になる、逆にトップの考え方ひとつが阻害要因にもなる、つまりトップの力が非常に大きいのだと改めて強調されました。

経済産業省の梶川氏からは、まず健康経営とは何なのかという認知を広げることが促進には重要だと政策的な視点で指摘した上で、自身が所属している経産省における経験を踏まえて、健康経営を進める上での一つのボトルネックはやはり組織文化であると個人的な見解も示していただきました。

武蔵大学の森永氏からは、健康経営に取り組む企業からの聞き取り調査のなかで、誰が主導して健康経営に取り組むのか、産業衛生の専門職と経営・人事側の共通言語を作っていくことが、促進の鍵ではないかと指摘がありました。

DSC_0536その後、「健康経営は果たして従業員に優しいのか?」「健康経営は実際のところお金が必要か?」「プロ意識のない社員への対応はどうするべきか?」など率直な議題が生まれ、会場を巻き込んで白熱した議論が展開されました。最後に、HHHの会参画企業の一員でもある鎌倉市の松尾崇市長より、ある職員の自殺をきっかけに職員の健康にどう取り組んでいけばいいのか模索中であると、会への参画動機をお話しいただくとともに、今日のフォーラムを経て、健康とは愛ではないか、それが社会全体の閉塞感を打破し、幸せな社会づくりの糸口になるのではとの感想を共有いただきました。

 

最後に、座長である金井氏より「No measure, No control(計測できないものは制御できない)」という言葉が紹介され、健康経営推進においても計測できる指標化の重要性についての示唆をもってHHHの会発足記念フォーラムを終了しました。

フォーラム後の懇親会には、90名を越える方に参加いただき、またHHHの会のアドバイザーである神戸大学 名誉教授 加護野忠男氏にも加わっていただき、熱気あふれる情報交換の場となりました。

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「HHHの会」発足記念フォーラム レポート