「HHH(スリーエイチ)の会」の第4回目、最終の会合として、2017年3月9日に神戸大学にてワークショップを開催しました。
HHHの会は、共通の健康増進活動(健康100日プロジェクト)を参画企業各社の従業員に提供し、その取組み前後で、働く意識や取り組み姿勢にどのような変化があったかを調査することで、健康経営の意義を検証しようという取組みですが、今回は、ついに最終報告会。
参画企業各社が7月~11月に取り組んだプロジェクトの前後に実施した事前事後調査の分析結果を、当会副座長である武蔵大学 経済学部 准教授の森永雄太氏に報告いただきながら、成果と今後の課題について議論を深めました。
「健康経営施策としての100日プロジェクト結果報告」調査からわかったこと
今回のプロジェクトは、15社968名が参加した大プロジェクトとなりました。
当会の事務局である株式会社Be&Doが提供するエンゲージメントツールHabi*doを用いた「健康100日プロジェクト」を、共通の健康経営施策として参画企業各社の従業員を対象に実施し、その事前および事後に、森永准教授が作成した質問紙調査を実施。
調査項目は、企業活動における生産性と関連の深いモチベーションやコミットメント、職務・職場への取組み姿勢などの測定項目を用いました。今回は100日間という比較的短期間の取組みのため、「サービスの質の向上」といった成果までは難しいという判断から、個人のパフォーマンス(与えられた仕事をきちんとやる)や、仕事上で工夫を行ったりネットワーキングを行うといった積極的な取組み姿勢などに影響があるかを見る項目を主軸に調査項目を設定しました。
事前事後のマッチングデータが得られた計13社715名のデータ分析の結果、健康への意識・運動の機会が増加したという健康分野での成果に加えて、企業の生産性に結びつく以下のような項目で有意な効果が認められました。
- 上司や同僚との協働意欲
- 会社に対する愛着・忠誠心
- 仕事における創意工夫行動
- 社内のメンバーとの積極的な人間関係構築
特に大きく高まったのは創意工夫(自分なりに工夫して、取り組む行動)と、ネットワーキング(積極的な人間関係構築)の二つでした。
今回各社が取り組んだ「健康100日プロジェクト」が、健康行動の習慣化を職場の人とコミュニケーション取りながら行うというプログラムだったため、同僚とのコミュニケーションの結果、周りの人が仕事をしやすいような仕事の進め方をしてみようと自分なりに工夫をしてみた、あるいは、人からアイデアをもらって新しい取り組みをやってみたといったことが増えてきていると解釈できるのでは?と、森永准教授からの解説がありました。
あくまでもプロジェクト直後の数値との比較であるため長期的に効果が継続するのかは不明であること、また各社ベースでは人数が少ないところもありどこまでの成果と判断するかは難しいケースもある、などの視点も必要ではあるものの、イノベーションの創出に繋がるこうした指標に効果があるということは、経営視点において非常に大きな示唆になるのではないでしょうか。
追加調査として行った3社へのヒアリング調査の結果についても報告があり、トップがコミットすることの効果や、こうしたプロジェクトを社内の一部で部分的に実施した場合、効果は参加しなかった人たちにまでは波及しない(統制群では事前事後に差はなかった)ことなどが示されました。
成果の詳細は、2017年5月28日(日)に神戸大学で行うフォーラムで報告いただきます。
各社の取組みの共有
続いて、ワークショップ形式で参画企業各社から実際のプロジェクト実施における「うまくいったアイディア」と「課題(今後に活かしたい検討事項)」について共有しました。従業員にいかに取組みの目的を理解してもらい巻き込んでいくか、実施する施策(活動)を活性化させていくか…各社から多彩な意見が出て、活発なディスカッションが行われました。
うまくいったアイディア
- 部門を横断したグループ編成を行ったことで、参加者どうしのコミュニケーションが高まった。
- 共通目標やルールを設定したことで、競争意識をうまく刺激することができた。
- グループ毎にリーダーを選出し、リーダーに役割を持たせたことで活性化した。
- 経営陣を巻き込みトップダウンで実施することで動機付けを高められる(最初はやらされ感があっても実際に参加してみると楽しかった、という感想が多くあった)。
- 表彰式のような機会を設定したり、ジャンプアップ賞などを設定することで、やる気を継続させることができた。
課題(今後に活かしたい検討事項)
- 事前に当プロジェクトの目的やルールなどの周知が不足していた。
- 人事や総務が主導してプロジェクトを推進すると、「評価に絡むのではないか?」という懸念を抱かせてしまった懸念がある(→プロジェクトの目的がきちんと認知されていない)。
- ITツールを使ったプロジェクトだったので、ITスキルやスマホの有無などが課題となるケースもあった。
- 競争要素にフォーカスし過ぎると、活動が過熱するという問題もあった。
- グループの編成の仕方、参加者の巻き込み方に課題が残った。
振り返りと今後の取組み
この1年の活動を振り返りつつ、各社それぞれに今後予定している自社の取組みについて発表を行いました。今回同様のプロジェクトを規模を拡大して実施を検討されている企業、優先して取り組むべき課題が明確になったことで独自の取組みを開始される企業など、それぞれが着実に「健康経営」に歩みを進めておられる様子が印象的でした。
最後に、HHHの会座長である金井教授より、尊敬する経営学者が「学者にとって、健康がなぜ大事か?」という問いに対して、「そもそも健康でなければ、深く考えることができない」と答えられたというエピソードの紹介がありました。これは、学者に限定されたことではなく、働く人全てにとっても重要な視点だという気づきの促しがありました。
あわせて、「健康経営がなぜ大事なのか?なぜ我が社は健康経営に取り組むのか?」ということについて、その企業のトップや担当者が、各社なりの答えを持っておくことも重要ではないか?という投げかけがありました。
約1年間にわたる「HHHの会」の取組みも、こうして嬉しい成果をもって終了することができました。
参画企業においては「健康経営」自体が初めての取組みという企業も多くありました。様々な試行錯誤のなかで真摯に取組みを進めてこられた各社のご担当者様、関係者様、ご参加者様に、事務局としてこの場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました!
今回の取組みや成果が、ますますの健康経営の輪の広がりと、多くの企業においてイキイキとした従業員、組織作りに繋がることを期待しております。
HHHの会における成果の詳細は、2017年5月28日(日)に神戸大学で行う『従業員の自律と主体性を引き出す「働き方改革」フォーラム』で報告いただきます。
フォーラムの詳細・参加申込みはこちら。